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地方自治体による空き家バンクの活用法。メリットとデメリット

2016/09/08

「空き家バンク」とは、地方自治体が移住希望者に空き家を賃貸・売買物件として紹介する仕組みです。

空き家の所有者が「自治体(+民間)が運営する空き家バンク」に物件を登録し、それを見た移住希望者に紹介するという流れになっています。現在、空き家バンクは全国的に増えており、各自治体はこぞって新住民の定住を図っている状況です。

なぜ空き家バンクが増えているかというと、田舎の場合、地域によっては不動産業者が活動していないところがあるため、放置された空き家が増え続けて問題になっていることが背景にあります。この状況を解消するための取り組みが空き家バンクなのです。

格安で暮らしも安心。買っても借りても◎

移住者(借りる・買う側)はメリットがたくさん

借りる側・買う側からしてみれば、利益を目的としない行政運営のため、金銭的な負担を心配せずに利用できるというメリットがあります。

実際に運営に当たるのは自治体職員のため、地元の情報に明るく幅広い人脈を備えているのも心強いです。また、地域住民との仲介者的役割を担ってくれるので、比較的早く地元に溶け込める可能性も高くなります。

地方への移住を考えている人にとってはありがたい仕組みです。

空き家バンクの制約

空き家バンクでは、利用者にある程度の制約を設けています。

原則としては、定住、または将来的に定住する予定である人を対象にしています。また、地元に溶け込んで積極的に関わることが求められます。ただ移住してきて、家に引きこもって外部との接触を断たれても困る訳です。

しかし、それさえクリア出来れば、超格安で物件を紹介してもらえて、さらに地域コミュニティへの扉が開かれているという、これ以上ない条件で移住計画を進められます。

登録制度が思わぬ壁に。自治体に頼り過ぎはダメ?

空き家バンクは借りる側、買う側にとてもやさしい制度です。

しかし、貸す側・売る側にとっては状況がやや異なります。

ほとんどの空き家バンクは「登録制」になっており、一定の審査をクリアする必要があり、物件の利用状況や設備状況によっては登録を認められないこともあります。

なぜなら、自治体としても、不適切な物件(所有者)を将来の定住者候補に紹介することはできないからです。

契約は当事者同士

空き家バンクに登録されると、自治体の窓口やホームページなどを介して、希望者に物件情報が開示されることになります。

しかし、自治体は契約そのものにはタッチしないのが一般的で、すべて当事者同士で決めることになります。

これがトラブルの原因になりやすいので注意が必要です。素人同士ですから無理もありません。中には不動産業者の仲介を勧める自治体もあります。

すべて当事者同士で進めなければならないため、契約が成立するまでかなり時間がかかるケースも多いです。これがネックで登録を躊躇してしまう空き家所有者もいます。

何より困ってしまうのが、空き家バンクに登録しても、そう簡単に買い手が見つからないということ。

自治体が運営しているからといってすぐに売れる訳ではありません。物件が気に入られなければ売れないのは、普通の不動産と一緒。これらを踏まえた上で登録を検討しましょう。

空き家バンクの主なメリットとデメリット

空き家バンクのメリット

自治体によっては物件リフォームの補助金が受けられる

リフォームが必要な物件に関しては、空き家バンクを利用した場合に補助金を支給してくれる自治体もあります。

不動産会社が扱いたがらない件でも扱ってもらえる可能性がある

不動産業者の場合はニーズがありそうな物件でなければ取り扱いすらしてもらえませんが、自治体の空き家バンクなら「住める物件」であれば扱ってくれます。

自治体独自の移住促進策とセットでPRしてもらえる

自治体独自の移住促進策があれば、移住者にとってのメリットが大きいので成約の可能性も高くなります。

家と併せて農地などの貸し出し、売却が出来る場合がある

自治体によっては空き家と共に農地を扱っているところもあります。

空き家バンクのデメリット

有名無実化している空き家バンクも多い

事業として立ち上げたものの、専任のスタッフがいない、公開している情報が古いなど、実質的に開店休業常態に陥っている空き家バンクも多いです。

各自治体に問い合わせてみて下さい。

移住希望者の「住みたい街」でなければ物件情報すら見てもらえない

全国展開する業者サイトのように不特定多数の人がチェックする訳でありません。人気がない街だと、移住者希望者が空き家バンクの存在すら知らないままで終わってしまいます。

不動産業者と違って売り込みに消極的

民間業者ではないので、物件情報の更新や空き家バンクをPRすることに消極的な自治体もあります。

物件所有者の要望・都合が優先されてしまう

売り手、貸し手の側に立てばメリットですが、逆の立場では大きなデメリットとなり、なかなか成約に至らない結果に陥ってしまうことも。

空き家バンク・登録前チェックリスト

物件は戸建てか?マンションか?

自治体によっては戸建てしか扱っていない場合もあります。農山村エリアだけでなく地方都市でもこの傾向が。

居住を目的とする物件か?

倉庫や納屋、物置や工場、商店など、居住物件以外は原則受け付けていない。

現在、居住可能な常態にあるか?

空家のままでも定期的に管理していたか?放置したまま数年が経過している物件では住める状態になく買い手がつかない可能性が高い。

現在も居住者がいるか?

居住者がいる場合は、いつ頃までに退去予定か明確にしておく必要があります。

物件の所有者は?

複数名で物件を共同所有している場合は、名義人すべての委任状が必要になります。

登録申請者は所有者本人か?

所有者本人以外で登録申請できるのは原則として親族のみ

※このほか自治体によっては、すでに売買や賃貸の仲介依頼をしていないか、あるいは当該物件の過去の取引状況など宅建業法関連の確認事項などがある場合もあります。