遺品整理と遺産相続ガイド

親の家の片付け方、不要品処分から遺産相続の手続きまで

境界が曖昧、登記の不備、売りたくても売れない親の不動産

親が所有していた不動産を相続したり、売買する際は、田舎特有の乗り越えなければいけない壁があります。

大きな障害となるのが、不動産の「境界」と「登記」の問題です。

この2つがクリア出来なかったがために、処分しようにも処分できないまま固定資産税や住民税、管理費などを払い続けている人も少なくありません。

もし、将来的に親の不動産を処分しようと考えているのなら、必ずチェックしておきましょう。

境界が曖昧では売ることが出来ない

土地を売る際、売り主は境界をはっきりと明示する義務があります。

境界というのは、文字通り自分の家と隣の家との境界、農地や山林で言えばお隣さんの所有地との境界のことです。

都会のように街が区画整理されていれば、家と家との間は明確に区別されていますが、田舎の物件の場合はこれが曖昧だったり、山地の測量が正確でないケースが多くなります。

曖昧なまま売買されても、当事者同士が納得していればそれで良いと思うかもしれませんが、買い主がローンを組む場合は簡単にいきません。

なぜなら、金融機関が買い主に対して土地の面積や境界の確認を求められることがあるからです。買い主は当然売り主に対して詳細を問い合わせることになり、売り主側は、境界、面積をはっきりさせる義務がありますので対応しなければなりません。

近隣の家との境界

たとえば、向かい合う家同士が庭部分を共有している場合、車を停める位置など暗黙のルールが存在して上手くやっていけるかもしれません。ですが、いざ家を売る場合は境界をはっきりさせなければいけません。

隣り合う家の間に木を植えている場合、月日が経って大きくなりすぎて邪魔だからといって伐採すると境界が曖昧になってしまいます。このような状況も売買のときは都合が悪いです。

将来的に親から土地建物を相続することがわかっているならば、今からお隣さんと話し合うなどして境界をはっきりさせておく必要があります。

山地の境界

山地などは、尾根や沢を境界にしているケースもあります。これは非常に曖昧です。

当事者が生きているうちに確認しておかないと、どの尾根や沢が境界なのかわからなくなってしまいます。

広大な面積の遊休地を測量し直すとなると、百万円単位での出費も覚悟しなければなりませんので、注意が必要です。

登記したくても出来ない「未相続」物件

境界に加えてもう1つの大きな壁は「登記」の問題です。

登記とは、公開された帳簿に記載すること。取引の際、第三者に不測の損害を被らせないための制度です。

親から不動産を継ぐことになったとき、所有権を被相続人から相続人に移す必要がありますが、宅地や家屋の場合、地方法務局へ申請して相続人の財産として登記する必要があります。そこではじめて不動産を売買することが出来るようになるのです。

「要は手続きをしておけば良いということね」と思うかもしれませんが、ここで多くの相続人たちがつまずきます。

なぜなら、田舎の家は「未相続」であることが少なくないからです。

実は名義変更が済んでいなかったというケース

たとえば、父親が所有者だった土地を母親が相続した場合。父親の死後はずっと母親が固定資産税を払うことになります。

ところが、フタを開けてみたら不動産自体は父親名義のままだったというケースがあります。

この場合、母親と子どもが集まって遺産分割協議を行い、各相続人の署名押印をとり、名義変更をしなければなりません。親子一代程度なら兄弟間でなんとか解決出来る範囲です。

しかし、祖父や曾祖父の名義のままだったという場合は大変です。その代まで遡って子孫を全て探し出し、法定相続人全員から書類に署名押印してもらわなければ相続は認められません。

仮に子孫を全員探し出せたとしても、果たして全員が好意的にハンコを押してくれるでしょうか。やってみないとわかりませんが、こうした土地の相続に関する揉め事は決して少なくないのが現実です。

法定相続人が十数人もいれば数十万円では解決できないかもしれません。不動産を売る場合、こうした事態もあり得るということを踏まえて考えていかなければいけないのです。