「建物は築10年で価値が0になる」と言われています。
そのため、多くの人が家を売るとき更地にしようとします。
しかし、これは高度経済成長期に広まった話で、幻想に過ぎません。
実際は、固定資産税の減価償却の考えに基づいて決められます。耐用年数20年の木造建築であれば、原則として20年目で建物の価値を1割と見積もるのが相場です。
ですから、親の家が10年以上前に建てたものだからといって「建物として価値はない。更地にして売りだそう」と考えるのは早計です。
更地の方が売りやすいの都会だけ
「更地の方が売りやすい」というのは人口の流動性が高い都会だけの話。地方だと、せいぜい県庁所在地か県内でも3番目程度までの大きな市の市街地ぐらいです。
田舎では、更地にしたところで何かその上に建てるものがありません。都市部でもない限り、駐車場にしても無意味でしょうし、マンションンやアパートを建てたところで肝心の借り手が見つからない、いや、いないと言った方がよいでしょう。
田舎でも土地さえあればいくらでもお金になったのはせいぜいバブル期まで。当時なら、自治体から工業用地にしたいと声が掛かったり、大企業から土地を売って欲しいと話を持ちかけられることもあったかもしれません。
しかし、今はまるで状況が違います。国内では工場が閉鎖に追い込まれている例も少なくありません。企業が工業用地を探すのは海外なのです。
買い手は今すぐ住み始めたいと思っている
更地にしたからといって買い手がつくとは限りません。
そもそも、買い手候補となるのは田舎暮らしに慣れている都会人。あるいは、同じ市町村内のさらに不便なところに家があり、より利便性の高いところに引っ越したいと思っている人々です。
ですから、更地ではなくて明日からでも住めるような宅地を望んでいることの方が圧倒的に多いのです。
買い手は更地を運用して商売をしたいと思っている訳ではありません。すぐにでもそこに住んで新しい生活を始めたい訳です。そういう意味では、多少古くてもきちんと人が住める建物があった方が売れやすいと言えます。
住宅を取り壊せば固定資産税は上がる
また、更地にすると固定資産税が増額されます。
正確に言うと、「家が建っていると更地にはない優遇が受けられる」のです。
200㎡以上の土地の場合、税額は更地のときの3分の1。200㎡未満の土地の場合、6分の1とかなりの開きがあります。
これを更地にしてしまうと、優遇措置が受けられなくなります。
更地にするためには工事が必要でお金がかかりますし、さらに固定資産税も上がる、おまけに売れにくくなります。三重苦です。
このような事情から、更地にするのはあまり賢い選択とは言えません。しっかり検討しましょう。