相続の問題はデリケートな話題です。いくら親子とはいえ、親がまだ生きているうちはなかなか切り出しにくいかもしれません。
しかし、「難しい話はまた後で」と放っておくのはまずいです。いざ相続となったとき、どこにどれくらいの財産があるのかわからず、相続の手続きが進まなくなってしまう恐れがあります。
なぜなら、親の資産を相続するときは、まず最初にプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含めて財産の全容を明らかにし、その上で相続人の間で分割する必要があるからです。
また、気をつけなれければいけないのは、相続の手続きには期限が設けられている場合もあるということ。早めに準備しておけば安心ですし、余計な混乱を生まずに済みます。
いざというときに困らないように、きちんと機会を設けて親と話し合っておきましょう。
どうしても話しにくいときはどうすれば良い?
相続の相談は、早い方が良いです。親も子も、お互いが元気で気持ちに余裕があるときに進めるのが理想的。
しかし、実際問題なかなか上手くタイミングをつかめず先延ばしになってしまうケースは少なくありません。
そんなときの対処法をまとめました。
どちらかが亡くなるまで待つ
どうしても話を切り出しにくい、あるいは親が話し合いを避けようとする。
そんなときは、「両親のどちらかが亡くなるまで、いったん相続の話はやめておく」という手もあります。
一次相続の後に本格的な相談を
片方の親が亡くなり、配偶者が残された際にする相続を「一次相続」と言い、これは残された親や子どもたちにとっては初めての相続になります。
一次相続を経て、家族は相続手続きの煩雑さを身も持って体験することになるのです。
この流れに乗って、いつかやってくる「二次相続」のために、今からきちんとした段取りを組んでおく必要があることを話せば、親も納得してくれるでしょう。
親本人ですら財産の所在を忘れていることがある
眠っている銀行口座はないか
実は、財産の全体、保管場所については、親もよくわかっていないという場合も少なくありません。
たとえば、「昔、付き合いで銀行に定期預金のことをすっかり忘れていた」なんてことがあります。
冒頭にも書きましたが、相続の際は「財産の全容を明らかにする」必要があるので、こうした細かいものをひとつひとつしっかり確認しなければならないのです。
今でこそ、1銀行1口座が原則となり、複数の口座を持ちにくくなっていますが、かつてはあまり厳密ではなかったのです。おそらく、眠っている口座が見つかる確率はかなり高いでしょう。
信じられないかもしれませんが、愛犬の名義で口座が作れた時代があったほどですから。
土地の権利者になっていないか
知らない間に土地の権利者になっていた(忘れていた)というケースもあるので、しっかり確認しましょう。
例えば、親が長男の場合、兄弟が住んでいる土地が、曾祖父などからの相続で実は自分の親の名義になっていたという事例もあります。
このような場合は、後々揉める原因となるので、親が亡くなったらどうするか今のうちに親の兄弟姉妹間で話し合っておくようにお願いしておくべきでしょう。
骨董品が眠っていないか
実家が代々続くような由緒ある旧家の場合、蔵に眠っているガラクタが実は価値の高いものだった、ということもあり得ます。一度整理する機会を設けて鑑定に出してみるのもありです。
所在を確認しておきたいリスト
預貯金関連
- どの銀行機関にどんな口座があるか?
- 使用していない休眠口座はあるか?
- 預貯金通帳の保管場所はわかっているか?
- キャッシュカード、印鑑の保管場所はわかっているか?
- タンス貯金はしているか?
預金通帳から届出印の陰影がなくなったりしていたら、見つけた印鑑をまとめて銀行に持ち込まなければならない場合もあります。
不動産関連
- 実家の登記簿は紛失せずに保管してあるか?
- 実家の土地建物意外に所有している不動産はないか?
- 親戚などに貸している不動産はないか?
- 祖父の名義のままなど、名義変更をしていない不動産はないか?
生命保険
- どんな保険に入っているか?
- 生命保険の種類は(定期か、終身か)?
- 医療・入院保険には入っているか?内容は?
- 保険証券の保管場所は?
- その他、医療・入院保険や損害保険、火災保険など入っているか?
- 昔加入してそのままになっている保険はないか?
自動車・バイク
- 名義は誰になっているか?
- 車検証はどこにあるか?
投資関連
- 株式、債券などの投資商品を保有しているか?
- 株式、債券の保管場所はどこか?証券会社か?
- 昔の株券を自宅に保管していないか?
保険証券や電子化される以前の株券、債券などは、思わぬところに隠されている可能性があります。
貴金属
- 価値のある貴金属、宝石を持っているか?
- どこに保管してあるか?
書画・骨董品
- 価値があると言われている書画や骨董品はないか?
- どこに保管してあるか?
- その入手場所と入手方法は?
- それらを入れていた箱などは残していないか?