遺品整理と遺産相続ガイド

親の家の片付け方、不要品処分から遺産相続の手続きまで

まだ大丈夫?生前整理と遺品整理の違い。今だからこそ始めるべき親の家の片付け

2016/10/20

「うちの親は元気だし、まだ大丈夫」

そう思って油断していませんか?

実は親の家の片付けは、親が元気な時なうちに始めるべきもの。早めに手をつけておけば、お互いとって良い面が多くなるのです。

大きく分けると、親の家の片付けには「生前整理」と「遺品整理」の2つがあります。要は、生きている間にやるか、亡くなってからやるかの違いです。

一見、いつやるかどうかの違いだけのように思われますが、そう単純ではありません。

生前整理と遺品整理はどう違うの?

「生前整理」とは、親が自分自身の意志で行う片付けのことです。そうすることで、「自分が亡くなったあとはこうして欲しい」という考えを家族が把握出来るメリットがあります。

一方、「遺品整理」というのは、本人が亡くなった後に家族が片付けるやり方のことを言います。

「親が生きている間は何かとやりにくい。後でやろう」と考えている人はかなり多いのですが、実際始めてみたら思いの外大変で、様々な不具合が起きるケースが多発しています。

なぜかというと、単純な話、「いる物・いらない物」の区別がつかないから。これが想像以上に手間がかかり、肉体的にも辛いですし、精神的苦痛も伴います。

ですから、できることなら親が元気なうちにやる「生前整理」の方が望ましいと言えるでしょう。

健康なうちは「まだまだ大丈夫」と思ってしまいがちですが、体力が衰えてきたり、病気になって入院してしまうと一気に大変になります。これは親だけではなく、子どもであるあなたにも言えること。

お互いにきちんと話し合いながら出来る時期に始めてこそ、満足のいく整理が可能になるのです。

親の家の片付けを始めるタイミングは?

生きている間に始めるのはわかった。じゃあそのタイミングはいつが良いのでしょうか?

ひとつの目安としては「親の定年」です。生活が変化するタイミングで切り出すのがやりやすいでしょう。

親が介護施設に入ってしまうまで待つとなると、今度は自分が50代後半~60代前半。そこまで行ってしまうと体力的にもかなりキツいです。お互いに元気なうちに始めるのがベスト。

親が亡くなった後だと、しばらくは悲しみのあまり何も手がつかないということも考えられますし、先ほども挙げたように「いる物・いらない物」の区別もつかず、非常に大変です。

ひとつの区切りとしては定年が良いタイミングですが、それ以外にもこんな兆候が現れたら片付けを考え始めると良いよ、というポイントをまとめました。

片付け開始を見極める6つのポイント

  • 親が60歳を過ぎた・・・
  • 冷蔵庫に賞味期限切れの物が増えた・・・
  • 趣味に使う時間が減っているようだ・・・
  • 目の届くところに出しっぱなしの物が増えた・・・
  • まとめ買いをしている物が多い・・・
  • 床置きの物が増えた・・・

この6つのうち、3つ以上が当てはまるようなら、片付けを始めるタイミングです。

親の家の片付けの手順

  1. 親と片付けについて話し合う
  2. 庭の手入れ
  3. 家の中の動線を確保
  4. 高い所の物を片付ける
  5. 寝室の片付けと物品チェック
  6. キッチン・台所の片付け
  7. リビングの片付け
  8. 衣類の整理
  9. アルバム・趣味の品の片付け
  10. 貴重品の所在を聞いておく

1. 親と片付けについて話し合う

生前整理において、当たり前ですが最も大切なのは「親と話し合うこと」です。

相続の話も大切ですし、遺品整理は大変だから・・・というのもあるのですが、「親を想う気持ち」をきちんと伝え、お互いに気持よく整理を進めることが一番です。

整理が行き届かない家は、足元がおぼつかなくなった状態ではケガにつながりやすく大変危険ですし、親自身は体力の衰えで掃除や整理が辛くなってきます。そうしたことを伝えつつ、「親の意見、考え」もきちんと受け入れながら進めましょう。

2. 庭の手入れ

雑草が伸び放題だったり庭木が鬱蒼と茂っていると、隣の家から苦情が来たりしますし、防犯上の問題もあるので普段から気をつけておきたいところです。

庭の手入れは比較的手をつけやすいですし、コミュニケーションのきっかけにもなります。昔話に花を咲かせながら、切り出しにくい相続の話をスムーズに聞ける空気を作ることが出来るかも。

3. 動線を確保する

床に物が散乱していると、親が転んでケガをする可能性が高くなり危険です。それに作業しづらいのでなかなか片付けが進みません。まずは動線、作業スペースの確保です。

特に居間から寝室、トイレまでの動線は床に物が置かれていない状態を保ちたいところです。

4. 高い所の物を片付ける

タンスの上、押入れの戸袋など、高所の物は取るのが大変でケガにつながりやすいです。

しかも、日常的には使わない物が置いてあることがほとんどですので積極的に処分します。その中で必要なものは親に確認し、一時保管用の箱を用意して、押し入れの奥などに移動させておきましょう。

5. 寝室の片付けと物品チェック

寝室は最もプライベートな空間ですから、親の生活の様子や体調が表れます。

毎日服用している薬があれば、小さな箱などにまとめておきましょう。100円ショップなどにある透明なフタ付きのものが良いです。病名や病状などを書いたメモも一緒にしておくと万が一の場面でも役立ちます。

家具は地震で倒れないかどうか確認し、危険な場合は留め具で固定。ものによっては別な部屋に移動させるのもありです。

6. キッチン・台所の片付け

食器や調理器具は長年使い続けるものが多い傾向にあります。子どもと同居しているときと同じ数がそのままになっていたりしますので、必要な分だけ残しておいて、あとはまとめて保管しましょう。

7. リビングの片付け

歳をとると、物が増える傾向にありますが、集中するのがリビングです。

メガネやテレビのリモコンは一箇所にまとめます。手紙や書類は用途に分けて整理。

今すぐ使わないものは保管箱を用意して、種類別にまとめておきます。

8. 衣類の整理

長年着ていないものを取っておいている人は多いです。構わず処分しようとするとケンカになりますので、きちんと確認してほとんど着ない服は別に分けて保管します。

9. アルバム・趣味の品の片付け

本、アルバム等、趣味関係の物は、親が亡くなってからだと思い出に浸ってしまい片付けがはかどらなくなります。

早めに手をつけておけば精神的にも負担が少ないですし、きちんと整理しておけば後々見返すときにも便利です。

趣味で集めていた骨董品、切手、レコードなどは処分するのにもお金がかかります。知り合いに譲るか、専門業者に買取を依頼してみましょう。

10. 貴重品の所在を聞いておく

通帳、印鑑を始めとして、不動産の権利証、生命保険証書など、相続財産の所在は、親が生きている間にきちんと聞いて把握しておきましょう。そうしておけば、後々のトラブルの回避にも繋がります。

片付けを通じて親子でコミュニケーションを図り、相続について話し合う機会を設けることが大切です。

一時保管箱の大切さ

親の家を片付ける上で、ケンカのもとになるのが不要品の処分。

子どもにとっては不要でも、親は処分したがらないものです。「物は大切に」という考えが根強い世代ですし、何より大切な思い出が詰まっている品々も多いでしょうから無理もありません。そこは合理的になったり変に意地を張らず、親の意見を聞き入れることが大切です。

普段の暮らしに必要ではないれど、親が捨てたがらないものは、一時保管箱を用意してそこにまとめておきましょう。そうしておけば、親も安心します。

種類別にきちんと整理して分けておけば、遺品整理の際もスムーズです。